イギリスの高校生活-もっとも重要な試験GCSEについて ~これから始める人へ~
小学六年生の時にバルセロナのインターに入り、今は去年引っ越してきたロンドンで現地校に通っています。日本では中三なのですがこっちの学校では九月からY10,日本でいう高一になりました。Y10 と言えばこっちでは「あー大変な時期に入ったのね」という頷きを得る感じ。何故かというとY11の夏に受ける「人生を左右する」(By 先生達)重要な試験GCSEに向けて勉強が始まる年だからです。とはいえ試験は二年後だし去年とそんな変わらないでしょ、と笑っていた自分は甘かった、、、
ようやくクリスマス休暇に入り、時間が出来たので現実を思い出したくないなーと思いながらもGCSE year 最初の学期を振り返って大変なところ、知っておきたかった事、イギリス式と日本式のメリットデメリットを書いていきたいなと思います。
GCSEとは?
先生たちのGCSEの定義は「人生で最も重要な、あなたの未来を左右する試験」。
私は両親とも日本の教育で育ったのでGCSEの存在が身近ではなく、あまり大変なイメージもなく、この定義を聞いても「また大げさなこと言っちゃって、、、」と思っていたのですが試験に向けての準備に入る学年になり、ようやくその大切さを分かり始めました。
だいたい先生達はこうやって私達を脅した後きまって「ま、まだ二年後のことなので心配しないで」というのですが心配させたくないならそんな恐ろしいこと言わないで、、、というのが私の先生達への一番のアドバイス。
それはさておき重要な以外に一体どういう物なのかというと
- 必須科目(英語、英文学、数学、理科三種)以外に四つ科目を選ぶ (システムは学校により違うのでこれは私の学校の場合)
- 選んだ科目以外はもう授業としては勉強しない
- ただし体育の授業は成績はつけられないものの、まだある
- Y10から準備を始めてY11の夏に試験を受ける(つまり試験の範囲は基本的にこの二年間で勉強したこと)
- 試験は各科目九段階で採点されその結果で行ける大学などが決まる
- 試験の結果はその生徒の学力レベルの判断基準となり、仕事の採用などにも中心的にかかわってくる
- つまりGCSEのスコアは一生ずーっと付きまとってくるもの
まあ最終的には先生の定義と同じような結論に至るのですが、もう少しだけ具体的にGCSEの社会における重要性と役割を伝えられたかな、と思います。
とここまでは調べれば分かるようなことなのですがここからは実際に私がGCSEに向けての勉強を始め、何が大変だったかなどを書いていきたいと思います。
いままでと比べて何が変わった?
1.宿題のタイプ
何が変わったと聞かれ真っ先に思うのが宿題。もちろん量も増えたのですが宿題のタイプがかなり変わったと思います。今までは割と復習シート、予習シートみたいなノリで問題をいくつか解く、というような授業の内容を理解していれば割と簡単に出来る宿題が多かったのですが、今年に入りどの教科でもエッセイなどただ知識を機械的に使うだけではできないような宿題が出る頻度が増えてきました。
例えば特に大変だった週の一週間で出た宿題を振り返ってみると、、、
月曜:英語-文法テストの予習
古代文明-テスト勉強(次の日まで)
火曜:古代文明-登場人物についてのエッセイ(2-3ページを金曜まで)
歴史-エッセイのプラニング(確かヴェルサイユ条約について)
水曜:課外アクティビティのミーティング
木曜:地理-授業で作った資料ファイルに目を通し重要な部分をマークする
予習シート (両方次の水曜まで)
フランス語-テスト勉強 (次の火曜まで)
金曜:算数-復習シート (月曜まで)
化学-復習シート
英語-短い小説を書く(5000文字ほど)
といったかんじです。どうでしょうか?日本もかなり宿題が多いのでなーんだこんなものか、と思う方もいらっしゃるかもしれませんが私にとっては去年とかなりの差があったので新しいペースに慣れるのが大変だなと感じています。エッセイなどは心に余裕があるときに書きたくて週末まで置いておくのですがそうすると土日が大変になってしまい、、、バランスが難しいです。前は数週間に一個だったエッセイが一週間に二個出る場合や締め切りが土日をまたがない場合も増えてきたので時間との闘いでもあります。
2.時間制限
先生たちは試験はまだまだ先のことだというのですが授業では試験を意識する機会が増えてきているのを感じます。今まで授業一コマ+宿題を使って書いていたエッセイを30分で書き上げなければならなかったり、(試験本番では15分で書かないといけないものもあるらしい)質だけでなく時間も重要になってきました。今から特訓しておけば試験を受けるころには楽勝だと言われるのですが練習すればするほど不安になります💦
3.先生によって教え方に大きく差が出始める
生徒がたくさんいるので同じ学年に同じ教科を教えている先生が少なくとも4人くらいはいます。必然的に明らかになるのは各先生の教育方針と授業の進め方のペース。去年も同じシステムだったので先生ごとに進み具合や教え方は違ったのですが、今年になってそれが更に明らかになった気がします。テストの採点の仕方、宿題の量、授業の進め方、科目によってはテストの内容まで!どうしてもアタリの先生とハズレの先生が出てきてしまい試験の結果は50%くらい先生との相性に関係してくるな、と生徒たちは思い始めています。例えば英文学で使っている小説を私のクラスは先生がハイペースで進めるのが好きなので宿題として各自物語の最後まで読み終えたのですが、聞いてみるとまだ半分までしか進んでいないところもあるそうです。いい先生に当たる運も必要ですが、ハズレだとしてもその先生と二年間一緒なので早くその先生の教え方に慣れる適応力も鍛えられる気がします。
4.大学生みたいな、、、
Y10になって少しウキウキしているのはちょっぴり大学生風の授業方法です。英文学や、古代文明では使用する課題小説(英語では今年は1984、古典文明ではオデッセイ)が配られるのですが去年までと違い、学年の終わりに返却しなくてよいので好きなように本に書き込みなどができるのです。(いつもは日本のように教科書はもらえなくて借りるという形)本を読みながらコメントや意味、分析をペンで本に直接書きこむのは新鮮でなんか大人みたいだなーとちょっとワクワクしました。大きいファイルを使うことや、長い資料を斜め読みすることも多くなり最初は少し疲れますがGCSEの勉強期間に入り少し成長したことを実感できてモチベーションが上がった気がします。
後悔していること、知っておきたかった事
勉強する科目を選んだのは去年(Y9)の中旬。私は必修科目以外に歴史、地理、フランス語と古代文明(ギリシャとローマ)を選んだのですが正直たまに後悔することがあります。どの科目もとっても好きで楽しいのですが去年からはまた好みが変わったり将来の夢も変わったりしたのでもう少し後に選べた方がいいのにとイギリスのこの早い段階で進路を決めてしまう制度には少し疑問もあります。私はクリエイティブなことが好きで演技をすることやアートがすごく好きなのですが去年のドラマとアートの先生がイマイチで、大好きな趣味が試験のための勉強になってしまうと嫌かなという思いもあり、いわゆるCreative subjectを一つも選びませんでした。でも自粛期間中に前より絵が好きになり、将来クリエイティブな仕事をしたいという思いも出てきたのです。いざ学期が始まるとアートやドラマのように想像力を使い感情を体で表現する授業がない時間割が少し寂しく思えました。エッセイを書く科目をたくさん選んだこともあるのですが、リラックスできるような科目が少し欠けている気が、、、
まだ変えることはできたのですが時間割が大幅に変わってしまい、わりといい先生に当たっていたのにそれが変わってしまうのは嫌だなという思いと、アートやドラマはCourse workという試験以外の大変で大切な評価の対象があり今からそういう科目に移るとなると追いつくために死ぬほど"残業"をしなくてはならないので変えないことにしました。
たまにアートの生徒を見るとウっと後悔しそうになりますがじっくり考えた結果であり、やらない理由もたくさんあったのでしっかりと判断できたと今では自信を持てます。
私が今から選ぶ生徒に言えることがあるとしたら最後まで決めつけないこと。先生との相性などで結構科目の印象って決まりがちですが最後の最後まですべての科目の可能性を残しておいてオープンなマインドで考えてみてください。ArtやDramaは大変だとよく言われますがArtを選んだ子で他の科目に途中から変えた子も多いので(Course workがある科目からない科目に変える方は私が検討したような逆の場合より簡単)気になったらとりあえずやってみるというのも一つの選択肢ですよ。
まあ、人生を左右するといってもGCSEが全てではもちろん無いですし、この先もたくさん可能性やチャンス、オポチュニティはあるのでそこまで深く悩まなくてもいいとは思います。本当にやりたかったら何でもできる。(私もArt選ばなかったけどまだ将来的にクリエイティブな仕事に携わることを諦めていない☻)
結論、、、イギリス式のメリットデメリット
デメリット
- 早い段階で科目を選ばないといけない
- 頑張る人と何となくやっている人の差が出てくる(頑張って、出来る人は上のレベルのクラスに入れられたり学外テストのオファーをもらったりしてやる気があれば学問のスパイラルでどんどん上に行けるが、何となくやっていると置いていかれてしまう)
- 教科書は配られるが普段の授業は教科書を使わないのでテスト勉強で教科書を使いたくてもイマイチどこに何が書かれているのか分からない
- 板書を書き写すというよりも先生が口頭で言ったことやディスカッションででた良い答えを積極的に書いていく方式なので英語の聞き取り能力は重要
メリット
-
試験の範囲がY10からの二年で学んだことなのでそれまでイギリス式で勉強していなくても遅れをとらない
- 先生が全ての答えを与えず、ディスカッションなどで生徒も参加できるので授業が印象に残る
- 自分で考えたり自分の意見を持つことが求められるので能動的
- 効率よく働く能力が身につく
- エッセイなど書く能力が鍛えられる
- 暗記勉強が少ない
- 先生によるとイギリス式は他のヨーロッパの国でもリスペクトされているので他の国の大学に行きたいとき通用する場合が多い(噂)
- 頑張ると褒められる(日本より優秀な生徒を褒めて表彰するというのが多い気がします。日本の皆を平等にという方針も素敵ですがやっぱり人間褒められると嬉しいもの。やる気や、近い目標もできやすいです)
この記事の内容はほとんど私の経験をもとにしているので全てが正確、他の学校でも同じ、という保証はありませんが少しでもイギリスの現地校の様子をお伝えすることが出来たら良かったなと思います。やる前はデメリットが目立ちがちですが初めて見るとメリットもたくさん見えてきて、少なくとも毎日やりがいがあります。
皆さんもそれぞれ大変だと思いますが頑張りましょう☻
大変な宿題も、毎回いつ指されて意見を求められるか未だに緊張する授業も、、、きっといつか役に立つ日がくるんだろうな。